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藝大リレーコラム - 第五十一回 真田将太朗「新型?藝祭」

連続コラム:藝大リレーコラム

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第五十一回 真田将太朗「新型?藝祭」

「新型コロナウイルス」という言葉を、誰も口にしていなかった2019年の九月、受験生だった私は初めて藝祭を経験しました。上野には巨大な御輿、賑やかな屋台が立ち並び、作品展示?演奏会?イベントが大学のいたるところで催されていました。分野や思想に違いはあっても、藝祭の喧騒へ情熱を注ぐ藝大生たちの姿に、憧れを抱いたことを記憶しています。

感染症の猛威は、突然に降りかかりました。2020年、入試ではマスクの着用が義務付けられ、現地での合格発表や入学式は中止。さまざまなコミュニケーションの「オンライン化」が謳われるようになりました。

藝大生として初めて門をくぐったのは、九月の終わり。合格してからちょうど200日目のことでした。藝祭に限らず、あらゆる経験の継承が分断され、世界中が正解を探すことに苦労する時代……前触れなく立たされてしまった難局に、芸術を大学で学ぶ意義すら、繰り返し自問する日々が続きました。

先輩から翌年度藝祭委員の招集があったのは、そんなときでした。感染症対策、委員会のコミュニケーション不足、大学の説得、資金集め、東京オリンピックとの兼ね合いなど、厳しい問題が数多く待ち受けることは宿命でした。それでも、困難を共有できる世代が協力し合い、「芸術祭の在りかた」を模索することに価値を感じ、参加することを決めました。

同輩と先輩方に選出され、実行委員長になってすぐ、現地?オンラインの併用開催を企画しました。新しい形を含んでも変わらず届けられる藝祭の力があることを信じ、テーマ「ON-」には人々や社会を前身させるスイッチをONできればという期待を込めました。

「いよいよ藝祭へ動き出そう!」とした今年の春、私は家族を亡くしました。私が藝大で学んでゆくこと、藝祭を企画することを楽しみだと言ってくれた人でした。「コロナ禍が終わったら会いに行く」という約束は、最期まで果たせませんでした。

「会うこと自体に、危険が伴う」という事実。

「無理にでも会って話せばよかった」という後悔。

「芸術を学んだ先で人の命を救えるのか」という疑念。

?抱えた大きな葛藤は、自分たちが模索しているイベントの在り方と、現実的に伝えられることとのギャップにも重なっていきました。苦悶への明確な答えは未だに出ていません。

しばらく経って、その人が亡くなる数時間前まで、私の描いた絵を眺めてくれていたという話を聞きました。抱えていた「何もしてあげられなかった」という自責から、少しだけ救われたのを覚えています。

自分たちが創り上げたものが、どこか遠くの誰かに知覚され、その人の心を動かすことができたのなら、そこに目指すべき「新しい藝祭」の意義もあるのかもしれない……。葬儀を終え、東京に戻ってすぐに藝祭に取り掛かることができたのは、そう信じていたいという想いに加え、実行委員の皆さんが懸命に仕事に向き合っている姿を知ったからです。全員が、学業と並行して膨大なコンテンツを準備し、世界に向けて配信するために多くの時間と労力を割いていました。藝祭の開催は、こうした実行委員や有志の努力、先輩方のサポート、大学職員の方々の協力に支えられています。

藝祭に関して起こった諸問題や、成功の実感を得る機会の喪失により膨らんでしまった不満?批判に対する責任は、すべて実行委員長である私にあります。無理を通すため、不快な思いをさせてしまったこともあったはずです。ご迷惑をおかけしながらも、最後までご協力いただいた関係者の皆様には、心から感謝を申し上げます。

半年間、藝大生の情熱が注がれつづけた「藝祭2021」。誰かの心に届くことを願っています。

>>藝祭公式WEBサイト

(藝祭2021メインビジュアル)

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写真(上):中央筆者 藝祭収録に臨む背中(2021811日撮影)

 


【プロフィール】

真田将太朗
東京藝術大学美術学部芸術学科2年在学中 2021年度藝祭実行委員長